『脈経』王叔和譔 (巻第一)⑩ ~鍼灸院必携・脈診の原典~

平虚実 第十

人に三虚三実有るは何のいいぞや。
しかるなり、脈の虚実有り、病の虚実有り、診の虚実有り。
脈の虚実は、脈来ることぜんなる者を虚と為し、ろうなる者を実と為す。
病の虚実は、出る者を虚と為し、入る者を実と為す。
言う者を虚と為し、言わざる者を実と為す。
緩なる者を虚と為し、急なる者を実と為す。
診の虚実は、癢なる者を虚と為し,痛なる者を実と為す。
外痛みて内快を外実内虚と為し、内痛みて外快を内実外虚と為す。
故に虚実と曰うなり。

問うて曰く、何をか虚実と謂うや。
答えて曰く、邪気盛んなるときは実、精気奪するときは虚。

何をか重実と謂わんや。
いわゆる重実なる者は大熱病を言う。気熱し脈満つ。是を重実と謂う。

問うて曰く、経絡ともに実せばいかん。何を以って之を治せん。
答えて曰く、経絡皆実は是れ寸脈、急にして尺緩なり。当に倶に之を治すべし。
故に曰く、かつなるときは順、しょくなるときは逆、夫の虚実は皆其の物の類に従て始まる。五臓骨肉滑利して以って長久なるべし。


【メモ】
前半は『難経』四十八難を大部分そのままでもってきている。
後半は『素問』通評虚実論篇 第二十八から抜き出している。
耎:やわらかいの意。『難経』では「耎」ではなく「じゅ」と書かれている。

白文

平虚實第十
人有三虚三實何謂也然有脉之虚實有病之虚實
有診之虚實脉之虚實者脉來耎者爲虚牢者爲實
病之虚實者出者爲虚入者爲實言者爲虚不言者
爲實緩者爲虚急者爲實診之虚實者癢者爲虚痛
者爲實外痛内快爲外實内虚内痛外快爲内實外
虚故曰虚實也
問曰何謂虚實答曰邪氣盛則實精氣奪則虚何謂
重實所謂重實者言大熱病氣熱脉滿是謂重實
問曰經絡俱實如何何以治之答曰經絡皆實是寸
脉急而尺緩也當俱治之故曰滑則順濇則逆夫虚

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底本:『脈経 仿宋何大任本』北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部・日本内経医学会
参考:『王叔和脉経』京都大学附属図書館所蔵