『脈経』王叔和譔 (巻第三)⑤ ~鍼灸院必携・脈診の原典~

心小腸部 第二 (2/3)

心は南方の火なり。[1]
万物洪盛、枝を垂れ、葉を布いて、皆下垂して曲るが如し。故に名づけて鉤と曰う。[2]
心の脈は洪大にして長、洪なるときは衛気実す。実するときは気従いて出ること無し。[3]
大なるときは栄気明なり、明洪相薄して、以って汗を発っすべし。故に名づけて長と曰う。[4]
長洪相得れば、水漿を引き、経絡に漑灌し、皮膚に津液す。[5]
太陽は洪大たり、皆是れ母軀たり、幸につちのえつちのとを得て、用いて根株を牢す。[6]
陽気上出して、汗頭に見ゆ。
五内枯燥して胞中空虚なり。医反て之を下す。此を重虚と為す。[7]
脈浮は表有りて裏無し、陽使わるる所無し。[8]
但、身を危にのみならず、並て其の母に中る。[9]
 右、四時経

注釈
[1] ^ : 心は血を主り、其の色、赤なり。故に夏を以って南方を王して火行に応ず。

[2] ^ : 心の王するの時、太陽事を用い、故に草木茂盛して枝葉布舒たり。皆下垂して曲る。故に之を鉤と謂う。

[3] ^ : 脈洪は衛気実す。衛気実するときは腠理密す。密するときは気従いて出ること無し。

[4] ^ : 栄なるは血なり。萌は当に明と為すべし。字の誤りのみ。血王す故に明にして、且、大なり。栄は明らかに衛を実す。当に須く発動して其の津液を通ずべし。

[5] ^ : 夏熱、陽気盛なり。故に其の人水漿を引く。肌膚を潤灌して以って皮毛を養う。猶ほ草木雨沢を須て以って枝葉を長ずるが如し。

[6] ^ : 太陽は夏火なり。春木を其の母と為す。陽、春始を得て生じ、名づけて少陽と曰う。夏に到りて洪盛、名づけて太陽と曰う。故に是れ母軀と言うなり。戊己は土なり。土は火の子たり。火王ずれば即ち土相す。故に用て根株を牢す。

[7] ^ : 月は当に内と為すべし。䓸は当に乾と為すべし。枯燥なり。皆字の誤りのみ。内の字は月に似たり。由来は遠なり。遂に以ってこれを伝う。
人の頭は諸陽の会たり。夏時に水漿を飲み、上出して汗と為し、先ず頭従り身軀に流れ、以って其の表を実す。是以ここをもって五内乾きて枯燥するときは胞中空虚にして津液少しなり。胞は膀胱、津液の腑なり。愚医さとらず、故に反て之を下し重虚せしむ。

[8] ^ : 陽盛にして脈浮は宜しく其の汗を発すべし。而も反て之を下せば陰気を損ず。陽を表と為し、陰を裏と為す。経に言く、陽は陰の為めに使われ、陰は陽の為めに守る。相須く行くべし。脈浮、故に裏無し。之を治して錯逆す。故に陰陽離別すべし。復た相て朝使能わず。

[9] ^ : 言く、之を下し但心を傷らず。並に復た肝に中る。

原文

心小腸部第二 (2/3)

心者南方火[1]萬物洪盛垂枝布
葉皆下垂如曲故名曰鉤[2]
心脉洪大而長洪則衞氣實實則氣無從出[3]
大則榮氣萌萌洪相薄可
以發汗故名曰長[4]
長洪相得即引水漿漑灌經絡津液皮膚[5]
太陽洪大皆是
母軀幸得戊己用牢根株[6]
陽氣上出
汗見於頭五月枯䓸胞中空虚醫反下之此爲重虚
[7]
脉浮有表無裏陽無所使[8]
不但危身并中其母[9]
    右四時經

注釈
[1] ^ : 心主血其色赤故以夏王於南方應火行
[2] ^ : 心王之時太陽用事故草木茂盛枝葉布舒皆下垂曲故謂之鉤也
[3] ^ : 脉洪者衞氣實衞氣實則腠理密密則氣無從出
[4] ^ : 榮者血也萌當爲明字之誤耳血王故明且大也榮明衞實當須發動通其津液也
[5] ^ : 夏熱陽氣盛故其人引水漿潤灌肌膚以養皮毛猶草木須雨澤以長枝葉
[6] ^ : 太陽夏火春木爲其母陽得春始生名曰少陽到夏洪盛名曰太陽故言是母軀也戊己土也土爲火子火王即土相故用牢根株也
[7] ^ : 月當爲内䓸當爲乾枯燥也皆字誤耳内字似月由來遠矣遂以傳焉人頭者諸陽之會夏時飲水漿上出爲汗先從頭流於身軀以實其表是以五内乾枯燥則胞中空虚津液少也胞者膀胱津液之府也愚醫不曉故反下之令重虚也
[8] ^ : 陽盛脉浮冝發其汗而反下之損於隂氣陽爲表隂爲裏經言陽爲隂使隂爲陽守相須而行脉浮故無裏也治之錯逆故令隂陽離別不能復相朝使
[9] ^ : 言下之不但傷心并復中肝

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底本:『脈経 仿宋何大任本』北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部・日本内経医学会
参考:『王叔和脉経』京都大学附属図書館所蔵

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