『脈経』王叔和譔 (巻第三)⑨ ~鍼灸院必携・脈診の原典~

脾胃部 第三 (3/3)

黄帝曰く、四時の序は逆順の変異なり。然れども脾の脈独り何ぞ主りたる。
岐伯曰く、脾は土なり。孤蔵にして以って四傍に灌ぐ者なり。
曰く、然らば脾の善悪を得て見つべしや。
曰く、善は得て見るべからず。悪は見つべし。
曰く、悪は何如。
曰く、其の来ること水の流るるが如きなる者、此れを太過と謂う。病、外に在り。
鳥の喙むが如きなる、此れを不及と謂う。病、中に在り。
太過なるときは人をして四肢沈重して挙がらざらしむ。
其の不及なるときは、人をして九竅壅塞して通ぜざらしむ。名づけて重強と曰う。

脾の脈、来て和柔、相離るること雞足の地を践するが如きなるを平と曰う。
長夏は胃の気を以って本と為す。
脾の脈、来ること実にして盈数、雞の足を挙るが如きなるを脾病と曰う。
脾の脈、来ること堅兌にして、鳥の喙むが如く、鳥の距の如く、屋の漏が如く、水の溜が如きなるを、脾死すと曰う。

真脾の脈至ること弱にして乍ち踈、乍ち散、色は青黄にして沢あらず。毛折れて乃ち死す。

長夏は胃、微にして濡弱を平と曰う。
弱多く胃少しを脾病と曰う。
但し代にして胃無を死と曰う。
濡弱にして石有るを冬病と曰う。
石甚しきを今病と曰う。

脾は榮を蔵し、榮は意を舎す。
愁憂解けざるときは意を傷る。意傷るるときは悶乱して四肢挙がらず、毛悴れて色夭して、春に死す。
六月季夏は未に建をさす。坤未の間は土の位、脾王するの時なり。
其の脈は大、阿阿として緩、名づけて平脈と曰う。
反して絃細にして長を得る者は、是れ肝の脾に乗じ、木の土を克するなり。賊邪、大逆と為す。十死治せず。
反して浮濇にして短を得る者は、是れ肺の脾に乗じ、子の母を扶くるなり。実邪と為す。病と雖ども自ら愈ゆ。
反して洪大にして散を得る者は、是れ心の脾に乗じ、母の子に帰するなり。虚邪と為す。病と雖ども治し易し。
反して沈濡にして滑を得る者は、腎の脾に乗じ、水の土を陵ぐなり。微邪と為す。病と雖ども即ち差ゆ。
脾の脈、萇萇として弱、来ること踈にして去ること数、再至を平と曰う。
三至を離経と曰い病む。四至は脱精、五至は死、六至は命尽く。足の太陰の脈なり。

脾の脈、急甚だしきは瘈瘲を為す。
微かに急は、脾中満を為し、食飲入りて還て出で、後に沫を沃ぐと。

緩なること甚だしきは、痿厥と為す。微かに緩を風痿と為し、四肢用いず、心慧然として病無きが若し。
大なること甚だしきは、撃仆と為す。微かに大を痞気と為し、大膿血を裹みて腸胃の外に在り。
小なること甚だしきは、寒熱と為す。微かに小を消癉と為す。
滑なること甚だしきは、頽癃と為す。微かに滑を虫毒蛔、腸鳴熱すと為す。
濇なること甚だしきは、腸頽と為す。微かに濇を内潰て膿血を多下すと為すなり。

足の太陰の気絶するときは脈其の口脣に営せず。
口脣は肌肉の本なり。脈営せざるときは肌肉濡す。
肌肉濡するときは人中満つる。人中満つるときは脣反る。脣反る者は肉先死す。
きのえに篤くして、きのとに死す。木は土に勝つなり。
脾の死蔵、之を浮べて脈大緩、之を中に按ぜば覆杯の絜絜として状揺く如きなる者は死す。

 右、素問、鍼経、張仲景

原文

脾胃部第三 (3/3)

黃帝曰四時之序逆順之變異也然脾脉獨何主岐
伯曰脾者土也孤藏以灌四傍者也曰然則脾善惡
可得見乎曰善者不可得見惡者可見曰惡者何如
曰其來如水之流者此謂太過病在外如鳥之喙此
謂不及病在中太過則令人四肢沈重不舉其不及
則令人九竅壅塞不通名曰重強
脾脉來而和柔相離如雞足踐地曰平長夏以胃氣
爲本脾脉來實而盈數如雞舉足曰脾病脾脉來堅
兌如烏之喙如鳥之距如屋之漏如水之溜曰脾死
真脾脉至弱而乍踈乍散[1]色青黃不澤毛折乃死
長夏胃微濡弱曰平弱多胃少曰脾病但代無胃曰
死濡弱有石曰冬病石甚曰今病
脾藏榮榮舍意愁憂不解則傷意意傷則悶亂四胑
不舉毛悴色夭死于春
六月季夏建未坤未之間土之位脾王之時其脉大
阿阿而緩名曰平脉反得絃細而長者是肝之乗脾
木之刻土爲賊邪大逆十死不治反得浮[2]
而短者是肺之乗脾子之扶母爲實邪雖病自愈反
得洪大而散者[3]是心之乗脾母之歸子爲
虚邪雖病易治反得沈濡而滑者腎之乗脾水之陵
土爲微邪雖病即差
脾脉萇萇而弱[4]來踈去數再至曰平三至
曰離經病四至脫精五至死六至命盡足太隂脉也
脾脉急甚爲瘈瘲 微急爲脾中滿食飲入而還出後
沃沫緩甚爲痿厥微緩爲風痿四肢不用心慧然若
無病大甚爲擊仆微大爲痞氣裹大膿血在腸胃之
外小甚爲寒熱微小爲消癉滑甚爲頽癃微滑爲蟲
毒蛔腸鳴熱濇甚爲腸頽微濇爲内潰多下膿血也
足太隂氣絶則脉不營其口脣口脣者肌肉之本也
脉不營則肌肉濡肌肉濡則人中滿人中滿則脣反
脣反者肉先死甲篤乙死木勝土也
脾死藏浮之脉大緩[5]按之中如覆杯絜絜狀如
揺者死[6]
    右素問鍼經張仲景

注釈
[1] ^ : 一作數
[2] ^ : 千金浮作微
[3] ^ : 千金作浮大而洪
[4] ^ : 千金萇萇作長長
[5] ^ : 一作堅
[6] ^ : 一云狀如炙肉

広告

底本:『脈経 仿宋何大任本』北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部・日本内経医学会
参考:『王叔和脉経』京都大学附属図書館所蔵

この記事へのコメント

広告