【第八節 四診】
(二)聞診
五昔を聞いて其病を別けるのが聞診の原義である。その他、咳嗽、喘鳴、吃逆、五声(呼、音、歌、哭、呻)五音、角(3.4.牙音)微(5.歯音)宮(1.7.唇音)商(2.舌音)羽(6.喉音)腹鳴等を聞いて病を察するのが聞診である。(上例は呂旋法長音階を示す)
五蔵に声あり、声に音(舌のあてかたによつて異る音の出ること)ありといわれてゐるが。
- 肝声は呼、音は角に応ず調て直にし音声相応ずれば病無く、角乱るゝときは病肝に在り。
- 心声は笑、音は微に応ず、和して長きは音声相応ず、病無し、微乱れぱ病心に在り。
- 脾声は歌、音は宮に応ず、大にして和なれば音声相応じ無病なり、宮乱れば病脾に在り。
- 肺声は哭、音は商に応ず、軽くして勁けれぱ音声相応じて無病なり、商乱れぱ病肺に在り。
- 腎声は呻、音は羽に応ず、沈にして深けれぱ昔声相応じ無病なり、羽乱れぱ病腎に在り。
猶ほ、五蔵の五声、五音の清濁に応ずるを以つて、或は互に相勝負し、或は其音、嘶嗄する類を聞いて其の病を別つべきであるといふてゐる。 - 哭し、すゝばなたれ、鼻ひるものは肺の病。
- 笑つて、よだれ多きものは脾の病。
- 怒りつぽく、よぱわり、涙多く出るものは肝の病。
- 唾多く吐き、呻くものは腎の病、腎虚なり。
- 汗出で、たわごとつくは心の病なり。
- 声の軽きは気弱なり。
- 声の重濁なるは風気の痛なり。
- 声たたぬは肺に病あり。
- 声急なるは神の衰。
- 声塞るは痰。
- 声ふるふは冷。
- 声むせぶるは気の不順なり。
- あえぐは気の促なり。
- あくび多きは気の滞りなり。
- 声高く、口はやきは邪気の実。
- 声低く云ふこと遅きは正気の虚。
- 物を云ひさして息をつくは少気。
- 言ふこと息短く、下より衝き上ろやうなるは短気。
(三)問診
問ふて之を知るといふのは、其の五味の欲するところを問ふて、其の病の起るところ、在るところを知ると難経には云ふてゐる。
- 酸は筋に走る、多く之を食すれば人をして癃たらしむ。(肝也)
- 鹹は血に走る、多く之を食すれぱ人をして渇せしむ。(腎也)
- 辛は気に走る、多く之を食すれば人をして洞心たらしむ。(肺也)
- 苦は骨に走る、多く之を食すれぱ人をして変嘔を発せしむ。(心也)
- 甘は肉に走る、多く之を食すれぱ人をして悶心たらしむ。(脾也)
つまり、五味の中、偏嗜又は偏して多食するの物を問ふて、臓気の偏勝偏絶の候あることを知るといふのである。
又親族看病の人の言ふ所と合ふや否やを問ふべし、病人が病を重く自らいふは多くは実である。病人が病を軽く自らいふは多くは虚である。
この他、病苦、自覚症、既往症、経過、屎尿、等を聞きただすところの診法である。