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杉山流三部書

選鍼三要集

総検校 杉山和一著

愚、偏陋(へんろう)を禀けて竊(ひそか)に鍼の道に志すこと曰く有り。故に入江先生の足下に遊んで命を聞くことを得たり。先生の道、軒岐を宗とす。故に常に謂ふ、見つべき者は内経なり。鍼法に於いて秘の旨多しと雖も補瀉要穴に過ぎず、虚実を分かち補瀉を用ひ井栄兪経合を宗とし要穴を主とすべしなり。且、餘力有る則は経穴を諳ず、是に於いて鍼の道畢る。臨機応変、医は意と謂つべしなり。予、其の幽玄を慕うて書を作りて大意を述ぶ。実に門人初学の為に発す。円機の士必ず以て贅と為んや。

題に曰く一に曰く神を治む、二に曰く身を養ふことを知る、三に曰く毒薬の真たることを知る、四に曰く砭石小大を制す、五に曰く府蔵血気の診を知る、五法倶に立て各(おのおの)先ずる所有りと云云。

愚、按ずるに霊枢玉版篇に謂へること有りや。帝の曰く夫子の鍼を言ふこと甚だ駿(をを)いなり。能く生ける人を殺し死する者を起こすことあたわず。子能く之に反せんや。岐伯の曰く能く生ける人を殺し死せる者を起こすことあたわざるなり。帝の曰く余之を聞くときは不仁と為す。然れども願わくは其の道を聞いて人に行はざらんことを。岐伯の曰く是れ明道なり、其れ必ず然らんや。其の刀剣の以て人を殺すべきが如く、飲酒人をして酔はしむるが如しなり。診ること勿じと雖も猶知るべし。嗚呼、旨あるかな経や。唐の王燾、深意を失て鍼を取らざるなり。是に依りて後世の愚人、耳目を驚かす。何ぞ此の理有らんや。猶鍼のみを謂ふにあらず。総て妄りに之を用ゆるときは薬灸何ぞ人を殺すの理無んや。然るに内経に鍼のみ人を殺すといふは実とに深意有りて存す。何を以て言ふとなれば、宝命論に謂へること有り。深渕に臨むが如く、手に虎握るが如し。神、衆物に営することなかれ。此れ王冰所謂工巧にして以て妄りに用ゆべからずの故なり。医統に曰く扁鵲謂へることあり。疾腠理にあるは熨炳の及ぶ所、疾血脈に在るは鍼石の及ぶ所、其の腸胃に在るは酒醪の及ぶ所、是鍼灸薬三つの者を兼ぬることを得て而して後に與に医と言つべし。曩に武、膠(あやま)ちを以へり。活人の術は薬に止まると、故に鍼と灸とを棄てて之を講ずることなし。傷寒の熱、血室に入りて閃挫す。諸疾薬餌の能く愈す所にあらず。必ず夫れ刺す者(ひと)を俟(ま)ちて則ち愈ゆ。又、介賓類経に此の事を論ず。一婦人傷寒の熱、血室に入ることを患ふ。医者識らず、許学士が曰く小柴胡を用ゆること遅し。当に期門を刺すべし。予、鍼することあたわず、善く鍼する者を請ふて之に鍼す。言の如くして而して愈ゆ。是れ鍼の要に非ずや。予もまた源を澄し本を端(ただ)さんと欲する豊蔀に坐するが若し。嗚呼旨有るかな鍼や。何ぞ妄りに二氏之を取らずと謂はんや。

補瀉迎隨を論ずる第一

愚、徧く内経を考ふるに幽玄微妙にして其の旨を得難し。
霊枢第一篇に曰く、瀉に曰く必ず持ち之を内れ放て之を出す陽を排き鍼を得る。邪気泄ることを得て按じて鍼を引く。補に曰く之に随ふ。之に随ふは意(こころ)妄りに之が若し、若しくは行らし若しくは按し、蚊虻の若にして止む。留むるが如く還るが如く去ること弦の絶するが如し。左をして右に属せしむ。其の気故(ことさら)に止まる。外門已に閉て中気乃ち実す。又曰く、徐(しづか)に入れ徐に出す、之を導気と謂ふ。是れ補なり。世説に亦た補瀉を論ずるなり。鍼を撚るに呼吸に向かいて鍼跡を開く瀉と謂つべし。呼吸に随いて穴を閉づ、是補なり。実とに一説なり、用ゆべきにもあらず、必ず用ゆべからずにもあらず。如何となれば難経に曰く補瀉の法、必ず呼吸出内の鍼のみならずや。鍼を為ることを知る者は其の左を信(もち)ふ。鍼を為ることを知らざる者は其の右を信ふ。之を刺す時に当て先づ左の手を以て按じ鍼する所の滎兪の所を圧えん。弾ひて之を努し爪して之を下す。其の気の来ること動脈の状(かたち)の如く、鍼を順にし之を刺す。気を得て因て推して之を内る。是を補と謂ふ。動して之を伸ぶる。是を瀉と謂ふ。気を得ざるときは乃ち男は外、女は内に与ふるに気を得ざるを是を十死不治と謂ふなり。
師の曰く左右補瀉を分かつべし。左を瀉せんと欲せば当に大指を将(もつ)を之を内にし、右を瀉せんと欲せば大指を将を外に当つ。此に反する者を補と謂ふなり。足下問ふ難経の本意は補瀉呼吸用ゆべからずと為するや。否や。予が曰く、実とに呼吸を用ゆべからずにも非ず。如何となれば。真邪論を按ずるに言へること有り。吸に則ち鍼を内れ気をして忤(さから)は令ること無かれ。静かにして以て久しく留む。邪をして布か令ること無かれ。吸するときは鍼を転じ気を得るを以て故と為す。呼を候ふを鍼を引き呼尽きて乃ち去れば大気皆出づ。故に命(なづけ)て瀉と曰ふ。是れ呼吸を謂ふに非ずや。
難経に謂く必ず呼吸出内の鍼のみに非ずとは。必ずの一字、実とに看過すべからずや。如何となれば呼に内れ吸に出すを補と曰ひ、吸に内れ呼に出すを瀉と為るのみに非ず。以て経の深意を尽さずといふのみ。且つ楊氏虞氏の輩(ともがら)に至りて補瀉呼吸を論ずること明らかなり。何ぞ呼吸に補瀉無しと謂はんや。師の曰く補瀉は迎隨を以て主とすべしや。迎て之を刺すを瀉と曰ひ、随て之を刺すを補と曰ふ。故に経に曰く逆ふて之を奪はば悪(いづく)んぞ虚なきことを得ん、追て之を済(すく)はば悪んぞ実なきことを得ん。之を迎へ之に随て意を以て之を和すれば鍼の道畢る。
手足三陰三陽を以て又論ずらく、手の三陰の如きは蔵従(よ)り手に走り、手の三陽は手従り頭に走り、足の三陰は足従り腹に走り、足の三陽は頭従り足に走る。其の気に逆ふを迎と為し瀉と為す、其気に順(したが)ふを随と為し補と為すなり。
或るひと問ふ、鍼は瀉あって補なしや、如何んして補と為す。予が曰く実とに無しと謂ふに非ず。然るに内経諸篇を観るに、
 根結篇に曰く、形気不足、病気不足此れ陰陽の気倶に不足なり。之を刺すべからず。
 宝命全形論に曰く、人に虚実有り五虚近づくること勿(なか)れ、五実遠ざくること勿れ。
 五閲五使篇に曰く、血気有餘にして肌肉堅緻、故に苦むるに鍼を以てすべし。
 奇病論に曰く、所謂不足を損すること無かれと、身羸痩するには鑱石を用ること無れや。
 脉度篇に、盛んなる者は之を瀉し虚する者は薬を飲ましめて以て之を補ふ。
 邪気蔵府病形篇に、諸(もろもろ)小なる者は陰陽形気倶に不足、取るに鍼を以てすること勿して調ふるに甘薬を以すや。
是れ補なきの謂ひなり。然れども師の常に曰く、人身血気の往来、経絡の流貫、或は陰を補ひ以て陽に配すべし。或は此れに因て以て彼を攻むべし。其の陰陽を和し其の血気を調ふことを欲して偏勝無から使め、其の平かなることを得ることを欲するに過ぎず。是れ所謂る補瀉なり。世医庸々にして栄衛の虧損、形容の羸痩、一切の精虚、気竭等の証、概ね鍼を用ひて調補せんと欲して反って元気を傷る。是を以て瀉有りて補無しと。嗚呼、至れるかな言へること。愚又諸篇を按ずるに、霊枢経言へること有り。虚実の要、九鍼最も妙なり。補瀉の時、鍼を以て之を為す。又曰く、虚するときは之を実すとは、気口虚して当に之を補ふべし。真とに鍼家の大義此に存せり。病経絡に留まり、或は気、臓腑に逆ふ是れ鍼の能く治する所以。故に先生は是を補とす。実とに無きに非ず。同士の輩ら、是に於て疑論を決せよ。

井栄兪経合を論ずる第二

経に曰く、帝の曰く、予願くは五臓六腑の出る所の処を聞かん。岐伯の曰く、五臓五兪、五五二十五腧、六腑六腧六六三十六腧、経脈十二、絡脈十五、凡て二十七気上下を以てす。出る所を井と為し、流るゝ所を栄と為し、注ぐ所を兪と為し、行く所を経と為し、入る所を合と為す。是れ二十七気の行く所、皆五腧に在り。
或る人問ふ、其の病を主ること如何ん。予が曰く大意を難経に論ずらく。井は心下満つることを主り、栄は身熱することを主り、兪は体重く節痛むことを主り、経は喘咳寒熱することを主り、合は逆気して泄することを主る。此れ五臓六腑井栄兪経合の主る所の病なり。
復た謝氏が註に則ち曰く、五臓の病を挙げて以て各(おのおの)一端例と為す。餘病は類を以て推して互い取るなり。六腑を言はざるは臓を挙げて以て之を該(か)ぬるに足れり。
又、経を論ず。五臓に六腑有り。六腑に十二原有り。十二原は四関より出づ。四関は五臓を治することを主る。五臓に病有らば当に之を十二原に取るべし。十二原は五臓の三百六十五節気味を禀(うく)る所以なり。五臓に病有らば、応に十二原に出づべし。十二原は各(おのおの)出る所有り。明かに其の原を知り其の応ずるを観て五臓の害を知る。
肺の原は太淵に出で、心の原は大陵に出で、肝の原は大衝に出で、脾の原は大白に出で、腎の原は大谿に出で、少陰の原は神門に出で、胆の原は丘墟に出で、胃の原は衝陽に出で、膀胱の原は京骨に出で、三焦の原は陽池に出で、大腸の原は合谷に出で、小腸の原は腕骨に出づ。此の十二原は五臓六腑に病有る者を治することを主る。
按ずるに井栄兪経合、又、井栄兪原経合は経穴を分かち主とすべし。五臓五の如く、六腑六の如し。然るに肺は少商を以て井と為し、魚際を栄と為し、太淵を腧と為し、経渠を経と為し、尺沢を合と為す。大腸の如きは商陽を井と為し、二間を栄と為し、三間を腧と為し、合谷を原と為し、陽谿を経と為し、曲池を合と為す。
肺心は終を以て井と為し、脾肝腎は初を以て井と為す。六腑の如きに至つては膀胱胆胃は終を以て井と為し、大腸小腸三焦は初を得て井と為す。
又、難経に曰く、春は井を刺し、夏は栄を刺し、季夏は兪を刺し、秋は経を刺し、冬は合を刺す者は何の謂ひぞや。然り、春井を刺す者は邪、肝に在り。夏栄を刺す者は邪、心に在り。季夏兪を刺す者は邪、脾に在り。秋、経を刺す者は邪、肺に在り。冬、合を刺す者は邪、腎に在り。一病毎に言はずと雖も刺法類を推し求むるに随て詳審すべし。

虚実を論ずる第三

夫れ医の道は虚実に在り。鍼刺猶ほ虚実を分つべし。故に経に曰く、天に寒暑あり、人に虚実あり、五虚近たること勿(なか)れ。足下問ふ、何をか五虚と謂ふや。予が曰く、経に曰ふ、脈細に皮冷寒え気少く泄利前後飲食入らず。此れ所謂五虚なり。近たること勿れとは鍼を刺さざるなり。何をか五実と謂ふ。予が曰ふ、経に曰く脈盛んに皮熱し腹脹り前後通ぜず悶(瞀?ポウ)す。此れ所謂五実なり。遠くること勿れとは鍼は補ひ難く瀉し易きを以ての故なり。要穴を分ち補瀉を用い虚実を宗として其の治を求めば千変万患何ぞ兪ざるの理あらんや。

謬鍼を論ずる第四

愚、按ずるに世に鍼を業とするもの往往にして経絡を知らず。或は鍼を用ゆるときは薬を忌み。或は天地の理に従がうて人身に約することを知らず。或は鍼刺皮理に浅く帰一と為し。或は経絡を知らず而して百患腹に在り、諸経を忌み之を世々にす。癡者此の理を貴とぶ。鍼の道甚だ安悟を知て妄りに世に行ふ者多し。予、常に其の弊を患(うれ)う。如何となれば夫れ医の本は内経に出づ。鍼経九巻則ち霊枢なり。鍼の道に未だ聞かず鍼を用ひ薬を用ひざることを。未だ聞かず経絡を知らずして天地の理を行ふことを。未だ聞かず浅鍼を用ひて深鍼を用ひざることを。未だ聞かず腹のみに鍼して四肢に鍼せざることを。未だ聞かず。按ずるに鍼を用ひて薬を用ひざるは外人に其の誉れを沾んが為めか。嗚呼医の道は生道なり。何ぞ愚の甚しきや。如何となれば、経に曰く五法倶に立ち各々先ずる所有りとは斯れ之を謂ふか。天道を知るときは是れ明道、人身に約することを知らずして何を以てか病を医せんや。
経に曰く人は地に生じ命を天に懸く。天地気を合して之を命じて人と曰ふ。天に陰陽有り人に十二節有り。十二節は何ぞ、十二経なり。故に経絡を知らざるときは人身に約すること能はず。百患経絡に受く。之を知らずして何を以て病を治せんや。浅鍼の術、虚老の人に於ては最も可なり。師は医を業とす。虚人に鍼を用ひざるは経を以て前に論ず。薬を用ひて之を補ふ。又、壮病の浅鍼は実とに変気の術なり。主とする所に非ず。
変気論を按ずるに、内五臓骨髄に至り、外空竅肌膚を膓る。所(こ)の以へに小病は甚しく大病は必ず死す。故に由を祝して己(いや)すこと能はずなり。何を以て病を変移せんや。然れども予用ひざるにも非ず。臨機応変、医は意なりと。何ぞ鍼刺を一に決せんや。腹のみに刺して四肢に刺さざるの説、井蛙蟻道の謂ひ説くに足らず。内経を観るに腹に用るの説無し。古人の鍼は井栄兪経合を以て主と為す。師の所謂至妙は四肢に在りや。病ひ五臓に過ぎず、五臓の経は四肢に満つ。一身の父母は心と肺となり。心肺も亦た膈上に在り。死生は当に二臓を以て主と為すべし。鍼の道腹に止まるときは灸も亦腹に止まるや。嗚呼思はざることの甚しきや。予も亦た腹を主り常に行ふ。或問ふ病は樹木の如にして枝葉、四肢に在り、本は腹に在り、本を切り、標益々盛んなる者は未だ聞かず。予が曰く師常に此を謂ふこと甚だ詳かなり。専ら腹を主り其の本を切り、又四肢を主どる其の標を切る。千変萬患何ぞ愈へざらんや。其れ樹木を以て譬(たとへ)とすること甚だ明かなり。大木の如きは則ち其の本を切れども標一時朽木及ばんや。根なきは則ち日を追ふて絶へ、朽ちざるの間必ず元気の害と為らんか。師の道は然らずや。其の本を切り其の標を切る。大病俄然として愈え。実とに補法なしと雖も病を治すること亟(すみや)かなるときは元気自ら栄んなり。予が曰く、愚医其の標本を知らず、四肢を本とし腹を標とするも有り、腹を本とし四肢を標とするも有り。何ぞ一理に窮まらんや。予も亦た腹を分つて同志に告ぐ。

腹経穴

任脈経は曲骨、中極、関元、石門、気海、陰交、神闕、水分、下脘、建里、中脘、上脘、巨闕、鳩尾。
 曲骨は臍下五寸。
 中極、関元、石門、各々一寸。
 気海は臍下一寸五分。
 陰交は臍下一寸。
 神闕は臍中なり。
 水分は臍上一寸、下脘の下一寸。
 下脘、建里、中脘、上脘、各々一寸。
 巨闕は上脘の上一寸五分。
 鳩尾は蔽骨の下五分。

腎経は横骨、大赫、気穴、四満、中注、肓兪、商曲、石関、陰都、通谷、幽門。
 横骨は肓兪の下五寸、曲骨の傍ら五分。
 大赫、気穴、四満、中注、肓兪、各々間去ること一寸、中行を開くこと五分。
 肓兪は臍の傍ら五分。
 商曲は肓兪の上二寸。
 石関、陰都、通谷、幽門、各々間去ること一寸、中行を開くこと五分。

胃経は不容、承満、梁門、関門、太乙、滑肉門、天枢、外陵、大巨、水道、帰来、気衝。
 不容は巨闕の旁ら二寸。
 承満、梁門、関門、太乙、滑肉門、各々間去ること一寸、中行を開くこと二寸。
 天枢は臍の旁ら二寸。
 外陵は天枢の下一寸、大巨は二寸。
 水道は大巨の下三寸。
 帰来は大巨の下五寸。
 気衝は帰来の下鼠谿の上一寸。

脾経は衝門、府舎、腹結、大横、腹哀。
 衝門は大横の下五寸。
 府舎は腹結の下三寸。
 腹結は大横の下一寸三分。
 大横は腹哀の下三寸五分、臍と平かなり。
 腹哀は日月の下一寸五分。共に中行を開くこと三寸半。

胆経は日月、京門、帯脈、五枢。
 日月は期門の下五分。
 京門は章門の後へ監骨の端。
 帯脈は章門の下一寸八分。
 五枢は帯脈の下三寸、水道の旁ら一寸半。

肝経は章門、期門。
 章門は下脘の旁ら九寸、横に臥して臂の尽くる所。
 期門は巨闕の旁ら三寸半。

九鍼の図

此の図は類経に出たり。全く類経図翼を引いて出せるものなり。
九鍼の図
一に曰く鑱鍼。其の頭大いにして其の末鋭なり。法を巾鍼に取る。末寸半を去りて漸く此を鋭にす。長さ一寸六分。熱頭身に在る者を治することを主る之を用ゆ。
二に曰く員鍼。其の身を筩にして其の鋒(ほう)を卵(かいこ)にす。法を絮鍼に取る。長さ一寸六分。分肉の間、気を身に満つる者を治することを主る之を用ゆ。
三に曰く鍉鍼。其の身大いにして其の末員なり。法を黎粟の鋭するとなるに取る。長さ三寸半。脈を按し気を取りて邪気をして出さしむる者を治することを主る之を用ゆ。
四に曰く鋒鍼。其の身を筩にして其の末を鋒(ほこ)にす。法を絮鍼に取る。長さ一寸六分。癰熱、血を出すことを主る。九鍼十二原篇に曰く三隅を刃にして以て痼疾を発す。
五に曰く鈹鍼。その末釼鋒の如し。以て大膿を取るべし。広さ二分半、長さ四寸。大癰膿、両熱、争う者を主る。
六に曰く員利鍼。尖り氂の如し、且つ員に、且つ鋭にす。微しく其の末を大いにし反て其の身を小にす。法を氂鍼に取る。長さ一寸六分。癰痺を取ることを主る。
七に曰く毫鍼。尖り蚊虻の喙の如し。法を毫毛に取る。長さ一寸六分。寒熱痛痺絡に在るを取ることを主る。
八に曰く長鍼。其の身を長くして其の末を鋒にす。法を綦鍼に取る。長さ七寸。深邪遠痺を取ることを主る。
九に曰く大鍼。其の鋒(さき)微しき員にす。法を鋒鍼に取る。長さ四寸。大気関節に出ざるを治することを主る。

十五絡脈

手の大陰の別、名づけて列缺と曰ふ。
 実するときは手の鋭掌熱し之を瀉し、虚するときは欠劫し小便遺数す之を補ふ。

手の少陰の別、名づけて通里と曰ふ。
 実するときは膈に支へ之を瀉し、虚するときはもの言ふこと能はず之を補ふ。

手の厥陰の別、名づけて内関と曰ふ。
 実するときは心痛し之を瀉し、虚するときは頭強ることを為す、之を両筋の間に取る之を補ふ。

手の太陽の別、名づけて支正と曰ふ。
 実するときは節弛み臂廃る之を瀉し、虚するときは疣を生じ小なる者は指の痂疥の如し之を補ふ。

手の陽明の別、名づけて偏歴と曰ふ。
 実するときは齲(むしくえ)聾(みみしひ)之を瀉し、虚するときは歯寒へ痺隔す之を補ふ。

手の少陽の別、名づけて外関と曰ふ。
 実するときは肘攣り之を瀉し、虚するときは収まらず之を補ふ。

足の太陽の別、名づけて飛陽と曰ふ。
 実するときは鼽窒頭背痛み之を瀉し、虚するときは鼽衂す之を補ふ。

足の少陽の別、名づけて光明と曰ふ。
 実するときは厥し之を瀉し、虚するときは痿躄し坐して起つこと能わず之を補ふ。

足の陽明の別、名づけて豊隆と曰ふ。
 其の病、気逆するときは喉痺卒瘖し、実するときは顛狂し之を瀉し、虚するときは足収まらず脛枯る之を補ふ。

足の大陰の別、名づけて公孫と曰ふ。
 厥気上逆するときは霍乱し、実するときは腸中切痛し之を瀉し、虚するときは鼓脹す之を補ふ。

足の少陰の別、名づけて大鍾と曰ふ。
 其の病、気逆するときは煩悶し、実するときは閉癃し之を瀉し、虚するときは腰痛す之を補ふ。

足の厥陰の別、名づけて蠡溝と曰ふ。
 其の病、気逆するときは皐腫卒疝し、実するときは挺長し之を瀉し、虚するときは暴癢す之を補ふ。

任脈の別、名づけて尾翳と曰ふ。
 実するときは腹皮痛み之を瀉し、虚するときは癢掻す之を補ふ。

督脈の別、名づけて長強と曰ふ。
 実するときは脊(せなか)強る之を瀉し、虚するときは頭重きことを為す之を補ふ。

脾の大絡の別、名づけて大包と曰ふ。
 実するときは身尽(みな)痛み之を瀉し、虚するときは百節尽く皆縦(ゆる)む之を補ふ。

凡そ此の十五絡脈は実するときは必ず見(あらは)れ、虚するときは必ず下る之を視れども見へず之を上下に求む。人の経同じからず。絡脈別るる所を以て異なればなり。

十四経穴並びに分寸

手の太陰肺経十一穴。中府、雲門、天府、侠白、尺沢、孔最、列缺、経渠、太淵、魚際、少商。
 中府は雲門の下一寸。雲門は璇璣の旁ら六寸。天府は腋下三寸。侠白は肘上五寸。尺沢は肘中約文陥なる中。孔最は腕上七寸。列缺は腕後一寸五分、手を交みて食指の端の届く所、骨間の陥なる中。経渠は寸口陥なる中。太淵は掌後約文陥なる中。魚際は大指本節の後へ。少商は手の大指の端内側爪甲を去ること韮葉の如し。

手の陽明大腸経二十穴。商陽、二間、三間、合谷、陽谿、偏歴、温溜、下廉、上廉、三里、曲池、肘髎、五里、臂臑、肩髃、巨骨、天鼎、扶突、禾髎、迎香。
 商陽は手の大指次指の端内側爪甲を去ること韮葉の如し。二間は大指次指本節の前内側。三間は次指本節の後へ内側。合谷は大指次指岐骨の間。陽谿は腕上陥なる中。偏歴は腕後三寸。温溜は腕後5寸の間。下廉は曲池の下四寸。上廉は三里の下一寸。三里は曲池の下二寸。曲池は肘を屈して約文の頭。肘髎は肘の大骨外廉陥なる中。五里は肘上三寸。臂臑は肘上七寸。肩髃は肩端陥なる中。巨骨は肩の上、骨の尖りの旁ら。天鼎は缺盆の上、扶突の下一寸。扶突は曲頬の下一寸。禾髎は水溝の旁ら五分。迎香は鼻孔の旁ら五分。

足の陽明胃経四十五穴。承泣、四白、巨髎、地倉、大迎、頬車、下関、頭維、人迎、水突、気舎、缺盆、気戸、庫房、屋翳、膺窓、乳中、乳根、不容、承満、梁門、関門、太乙、滑肉門、天枢、外陵、大巨、水道、帰来、気衝、髀関、伏兔、陰市、梁丘、犢鼻、足三里、上巨虚、條口、下巨虚、豊隆、解谿、衝陽、陥谷、内庭、厲兌。
 承泣は目下七分。四白は目下一寸。巨髎は鼻孔の旁ら八分。地倉は口吻をさし夾むこと四分近し。大迎は曲頷の前一寸三分。頬車は耳の下八分陥なる中。下関は耳前の動脈。頭維は神庭の旁ら四寸半。人迎は結喉の旁らをさし夾むこと各々一寸五分。水突は人迎の下陥なる中。気舎は水突下の陥なる中。缺盆は気舎の後へ大骨陥なる中。気戸は璇璣の旁ら中行を開くこと各々四寸。庫房は気戸の下一寸六分。屋翳、膺窓、乳中、乳根、各々間去ること一寸六分、中行を開くこと四寸。不容は巨闕の旁ら二寸。承満、梁門、関門、太乙、滑肉門、各々間去ること一寸、中行を開くこと二寸。天枢は臍の旁ら二寸。外陵は天枢の下一寸、大巨は二寸。水道は大巨の下三寸。帰来は大巨の下五寸。気衝は帰来の下鼠谿の上一寸。髀関は膝の上一尺二寸。伏兔は膝の上六寸。陰市は膝の上三寸。梁丘は膝の上二寸、両筋の間。犢鼻は膝の間の中。三里は膝眼の下三寸。上巨虚は三里の下三寸。條口は三里の下五寸。下巨虚は三里の下六寸。豊隆は外髁の上八寸。解谿は外髁の前、衝陽の後ろへ一寸五分。衝陽は陥谷を去ること二寸。陥谷は内庭を去ること二寸。内庭は大指次指の外骨の間。厲兌は足の大指次指の端外側爪甲を去ること韮葉の如し。

足の太陰脾経二十一穴。隠白、大都、太白、公孫、商丘、三陰交、漏谷、地機、陰陵泉、血海、箕門、衝門、府舎、腹結、大横、腹哀、食竇、天谿、胸脇、周栄、大包。
 隠白は足の大指の端内側爪甲を去ること韮葉の如し。大都は大指本節の前内側。太白は大指本節の後へ核骨の下陥中。公孫は大指本節の後ろへ一寸陥なる中。商丘は内髁の前、微しき下陥中。三陰交は内髁の上三寸。漏谷は内髁の上六寸。地機は膝下五寸。陰陵泉は膝下内廉陥なる中。血海は膝の上二寸。箕門は魚腹の上、越筋の間陰股の内動脈有り。衝門は大横の下五寸。府舎は腹結の下三寸。腹結は大横の下一寸三分。大横は腹哀の下三寸五分、臍と平(ひとし)。腹哀は日月の下一寸五分、共に中行を開くこと三寸半。食竇は天谿の下一寸六分。天谿、胸脇、周栄、各々間去ること一寸六分、中行を開くこと六寸。大包は腋下、淵腋の下三寸に終る。

手の少陰心経九穴。極泉、青霊、少海、霊道、通里、陰郄、神門、少府、少衝。
 極泉は腋下筋間の動脈胸中に入る。青霊は肘上三寸。少海は肘の内廉大骨の下五分。霊道は腕後一寸五分。通里は腕後一寸。陰郄は掌後脈中腕を去ること五分。神門は掌後鋭骨の端。少府は手を握りて約文の頭。少衝は手の小指の端内側爪甲を去ること韮葉の如し。

手の太陽小腸経十九穴。少沢、前谷、後谿、腕骨、陽谷、養老、支正、小海、肩貞、臑兪、天宗、秉風、曲垣、肩外、肩中、天窓、天容、肩髎、聴宮。
 少沢は手の小指の端外側爪甲を去ること韮葉の如し。前谷は小指外側本節の前。後谿は外側本節の後へ。腕骨は小指の後へ岐骨の留り。陽谷は掌後、鋭骨の下、腕上一寸に求む。養老の穴。支正は腕後ろ五寸に有り。小海は肘の外側の大骨の外廉、肘端を去ること五分。肩貞は肩曲胛の下。臑兪は肩髎の後へ大骨の下陥なる中。天宗は秉風の後へ大骨の下陥なる中。秉風は肩の上臂を挙げれば空(あな)有り。曲垣は肩の中央陥なる中。肩外は大杼と平(ひとし)、脊骨を去ること三寸。肩中の兪は大椎の旁ら二寸。天窓は缺盆の上、扶突の後へ、動脈陥なる中。天容は耳下曲頬の後へ。肩髎は面鳩骨の下廉陥なる中。聴宮は耳前赤小豆の如し。

足の太陽膀胱経六十三穴。睛明、攅竹、曲差、五処、承光、通天、絡却、玉枕、天柱、大杼、風門、肺兪、厥陰、心兪、膈兪、肝兪、胆兪、脾兪、胃兪、三焦、腎兪、大腸、小腸、膀胱の兪、中膂内兪、白環兪、上髎、次髎、中髎、下髎、会陽、附分、魄戸、膏肓、神堂、譩譆、膈関、魂門、陽綱、意舎、胃倉、肓門、志室、胞肓、秩辺、承扶、殷門、浮郄、委陽、委中、合陽、承筋、承山、飛陽、跗陽、崑崙、僕参、申脈、金門、京骨、束骨、通谷、至陰。
 睛明は目の内眥外へ一分。攅竹は眉頭の陥なる中。曲差は神庭の旁ら一寸五分。五処は曲差の後へ五分。承光は五処の後へ一寸五分。通天は承光の後へ一寸五分。絡却は通天の後へ一寸五分。玉枕は絡却の後へ一寸五分。天柱は頚の大筋外廉髮際陥なる中。大杼は第一椎の下中行を開くこと各々一寸五分。風門は第二椎の下、肺兪は第三椎の下、、厥陰の兪は第四椎の下、心兪は五、膈兪は七、肝兪は九、胆兪は十、脾兪は十一、胃兪は十二、三焦の兪は十三、十四は腎兪、十六は大腸、十八は小腸、十九は膀胱、二十は中膂内兪、第二十一の椎の下に白環有り。上髎は第十七椎の下、次髎、中髎、下髎、各々脊をさし夾む。会陽の二穴は座して之を収る口伝。又上第二椎の下に附分有り、中行を開くこと各々三寸。第三魄戸、四は膏肓、神堂は五、譩譆は六、膈関は七、魂門は九、陽綱は十、意舎は十一、胃倉は十二、肓門は十三、十四は志室、十九は胞肓、二十は秩辺。承扶は尻の下約文中央陥なる中。殷門は承扶の下六寸。浮郄は一寸外の方の上。委陽は却って殷門と並ぶ。委中は膝下約文陥なる中、動脈有り。此の下三寸合陽の穴。承筋は合陽と承山との中央。承山は腨分跟(きびす)の上七寸、承筋の通り。飛陽は外踝の上七寸、承山と並ぶ。跗陽は外踝の上三寸。崑崙は外踝の後へ陥中。僕参は跟骨下陥中。申脈は外踝の下五分。金門は外踝の下一寸。京骨は外踝の前大骨の下陥なる中。束骨は小指外側本節の後へ。通谷は外側本節の前。至陰は足の小指の端外側爪甲を去ること韮葉の如し。

足の少陰腎経二十七穴。湧泉、然谷、太谿、大鍾、照海、水泉、復溜、交信、築賓、陰谷、横骨、大赫、気穴、四満、中注、肓兪、商曲、石関、陰都、通谷、幽門、歩廊、神封、霊墟、神蔵、或中、兪府。
 湧泉は足心陥なる中。然谷は内踝の前大骨の下陥なる中。太谿は内踝の後へ動脈有り。大鍾は足の跟の前外、両筋の間、太谿の下五分。照海は内踝の下一寸。水泉は太谿の下一寸。復溜は内踝の後へ上二寸。交信は内踝の上二寸。右の二穴は前後有り筋を隔つ。太陰の後へ少陰の前へ。築賓は内踝の上五寸。陰谷は膝下約文陥なる中。横骨は肓兪の下五寸、曲骨旁ら五分。大赫、気穴、四満、中注、各々間去ること一寸、中行を開くこと五分。肓兪は臍の旁ら五分。商曲は肓兪の上二寸。石関、陰都、通谷、幽門、各々間去ること一寸、中行を開くこと五分。歩廊は神封の下一寸六分。神封、霊墟、神蔵、或中、各々間去ること一寸六分、中行を開くこと二寸。兪府は璇璣の旁ら二寸に当る。

手の厥陰心包経九穴。天池、天泉、曲沢、郄門、間使、内関、大陵、労宮、中衝。
 天池は乳後一寸。天泉は腋下二寸。曲沢あ肘の横文陥なる中。郄門は腕後五寸。間使は腕後三寸。内関は腕後二寸、両筋の間。大陵は掌後両筋の間。労宮は中指無名指を屈して頭の当る所。中衝は手の中指の端内側爪甲を去ること韮葉の如し。

手の少陽三焦経二十三穴。関衝、液門、中渚、陽池、外関、支溝、会宗、三陽絡、四瀆、天井、清冷淵、消濼、臑会、肩髎、天髎、天牖、翳風、瘈脈、顱息、角孫、耳門、和髎、絲竹空。
 関衝は手の無名指の端外側爪甲を去ること韮葉の如し。液門は小指次指本節の前。中渚は液門の後へ一寸。陽池は腕上陥なる中。外関は腕後二寸。支溝は腕後三寸、両骨の間。会宗は腕後三寸外の旁ら。三陽絡は腕後四寸内の方。四瀆は肘の前五寸。天井は肘の後の上一寸。清冷淵は肘上二寸。消濼は腋に対す臂外。臑会は肩頭を去ること三寸。肩髎は肩の巨骨の後ろ陥なる中。天髎は肩井の後へ一寸。天牖は缺盆の上天容の後へ、天容と筋を隔つ、天柱の前。翳風は耳後尖角陥中。瘈脈は耳後鶏足に逢ふ。顱息は耳後の青絡脈に有り。角孫は耳上の中央、穴有り。耳門は耳珠耳缺に当る。和髎は耳前兌髪横動脈。絲竹空は眉の後へ陥なる中に終る。

足の少陽胆経四十三穴。瞳子髎、聴会、客主人、頷厭、懸顱、懸釐、曲鬢、率谷、天衝、浮白、竅陰、完骨、本神、陽白、臨泣、目窓、正営、承霊、脳空、風池、肩井、淵腋、輒筋、日月、京門、帯脈、五枢、維道、居髎、環跳、中瀆、陽関、陽陵泉、陽交、外丘、光明、陽輔、懸鐘、丘墟、足臨泣、地五会、俠谿、竅陰。
 瞳子髎は目の外眥を去ること五分。聴会は耳前の動脈陥なる中。客主人は耳前起骨の上、口を開けば空有り。頷厭は脳空の上廉曲角の下。懸顱は頷厭の下曲角の端。懸釐は耳上髮際陥なる中。曲鬢は耳上髮際の角。率谷は耳上髮際髪に入ること一寸五分陥なる者宛々たる中に有り。天衝は耳後髮際に入ること二寸。浮白は耳後髮際に入ること一寸。竅陰は完骨の上枕骨の下動揺すれば空あり。完骨は耳後髮際に入ること四分。本神は曲差の旁ら一寸五分。陽白は眉上一寸。臨泣は目の上直に髮際に入ること五分。目窓は臨泣の後へ一寸。正営は目窓の後一寸。承霊は正営の後へ一寸五分。脳空は承霊の後へ一寸五分。風池は耳後顳顬の後へ髮際陥なる中。肩井は肩上陥なる中、大骨の前一寸。淵腋は腋下三寸。輒筋は淵腋の前一寸。日月は期門の下五分。京門は章門の後へ監骨の端。帯脈は章門の下一寸八分。五枢は帯脈の下三寸。維道は章門の下五寸三分。居髎は章門の下八寸三分。環跳は髀枢の中、横に臥し下足を伸べ上足を屈して之を取る。中瀆は膝上五寸、分肉の間陥なる中。陽関は陽陵泉の上三寸。陽陵泉は膝下一寸外廉。陽交は外踝の上七寸。外丘は外踝の上七寸前に如(ゆく)こと三分。光明は外踝の上五寸。陽輔は外踝の上四寸。懸鐘は外踝の上三寸。丘墟は外踝の下前に如(ゆく)臨泣を去ること三寸。臨泣は小指次指本節の後への間俠谿を去ること一寸五分。地五会は俠谿を去ること一寸。俠谿は小指次指岐骨の間。竅陰は足の無名指の端外側爪甲を去ること韮葉の如し。

足の厥陰肝経十四穴。大敦、行間、太衝、中封、蠡溝、中都、膝関、曲泉、陰包、五里、陰廉、急脈、章門、期門。
 大敦は足の大指の端外側爪甲を去ること韮葉の如し。行間は大指次指岐骨の間。太衝は大指本節の後ろへ二寸。中封は内踝の前一寸。蠡溝は内踝の上五寸。中都は内踝の上七寸。膝関は犢鼻の下二寸。曲泉は膝内輔骨の後へ大筋の上、小筋の下。陰包は膝の上四寸、股の内廉両筋の間。五里は気衝の下三寸、陰股の中動脈有り。陰廉は羊矢の下気衝を去ること二寸、裏に斜めなること三分。急脈は陰茎の両旁相去ること二寸半。章門は下関の旁ら九寸、臂の尽くる所。期門は不容の旁ら一寸五分。

任脈経二十四穴。会陰、曲骨、中極、関元、石門、気海、陰交、神闕、水分、下脘、建里、中脘、上脘、巨闕、鳩尾、中庭、膻中、玉堂、紫宮、華蓋、璇璣、天突、廉泉、承漿。
 会陰は両陰の間。曲骨は臍下五寸。中極、関元、石門、各々一寸。気海は臍下一寸五分。陰交は臍下一寸。神闕は臍中なり。水分は臍上一寸、下脘の下一寸。下脘、建里、中脘、上脘、各々一寸。巨闕は上脘の上一寸五分。鳩尾は蔽骨の下五分。中庭は膻中の下一寸六分。膻中は玉堂の下一寸六分、直ちに両乳の間陥なる中。玉堂、紫宮、華蓋、各々間去ること一寸六分。華蓋は璇璣の璇璣の下一寸。璇璣は天突の下一寸。天突は結喉下三寸。廉泉は結喉の上頷下陥なる中。承漿は下唇の下陥なる中に終る。

督脈経二十八穴。長強、腰兪、陽関、命門、懸枢、脊中、中枢、筋縮、至陽、霊台、神道、身柱、陶道、大椎、瘂門、風府、脳戸、強間、後頂、百会、前頂、顖会、上星、神庭、素髎、水溝、兌端、齦交。
 長強は髀骨の下陥なる中。腰兪は第二十一の椎の下。陽関は十六の椎の下。命門は十四の椎の下。懸枢は十三の椎の下。脊中は十一の椎の下。中枢は十、筋縮は九、至陽は七、霊台は六、神道は五、身柱は三、陶道は第一の椎の下。大椎は第一の椎の上。瘂門は髮際に入ること五分。風府は髮際に入ること一寸。脳戸は強間の後へ一寸五分。強間は後頂の後へ一寸五分。後頂は百会の後へ一寸五分。百会は前頂の後へ一寸五分。前頂は顖会の後へ一寸五分。顖会は上星の後へ一寸。上星は前髪に入ること一寸。神庭は髮際に入ること五分。素髎は鼻端頭に准ず。水溝は鼻の下陥なる中。兌端は上唇の端。齦交は唇の内、上歯の縫いめの中に終る。

鍼灸要穴の論

夫れ鍼灸を用ひんと欲する者は当に要穴を主とすべし。灸は寒邪を散じ鍼は欝滞を開く。千患愈へずということなし。然れども世に鍼を業とする者、要穴を刺して兪へずと謂ふ。何ぞ此の理有らんや。予、甞て思ふに腹を主として要穴を知らず、或は左右の補瀉を分かたず、或いは穴処を失ふて鍼を取らず。嗚呼、思はざることの甚しひかな。故に分寸を明かにし要穴を論ず。鍼灸諸家の当に察すべき所なり。

傷寒頭疼身熱
二間、合谷、神道、風池、期門、足の三里。

汗出ざるには
合谷、腕骨、期門。

陰症には
太白、復溜、足の三里。

腹脹には
太白、復溜、足の三里。

舌捲き嚢縮まるには
天突、廉泉、血海、腎兪、然谷。

中風 人事省みざるには
百会、風池、大椎、肩井、曲池、足の三里。

半身遂はざるには
肩髃、百会、肩井、客主人、列缺、手の三里、曲池、崑崙、陽陵泉。

口眼喎斜には
頬車、地倉、水溝、承漿、合谷。

口噤んで開かざるには
合谷、頬車。

瘖瘂には
天突、霊道、然谷、豊隆、陰谷。

癱瘓
肩井、肩髃、曲池、合谷、足の三里、崑崙。

虚癆には
四花を主とすべし。最も鍼に神妙有り腹を主とすべし。

盗汗には
肺兪、復溜、譩譆。

血症 吐血には
肺兪、心兪、肝、脾、腎、中脘、天枢、太淵、間使、大陵。

衂血には
顖会、上星、風門、湧泉、合谷。

便血には
中脘、気海。

尿血には
膈兪、脾兪、三焦兪、腎兪、列缺。

水腫には
水溝、水分、神闕三壮、肝、脾、胃、腎、中脘、気海、陰交、公孫、石門、中極、陰陵泉。

脹満には
中脘、水分、不容、気海、肓兪、天枢、肝兪、脾兪、三焦兪、公孫、大敦。

虚癆浮腫には
太衝。

積聚痞塊
灸は命門を以て主とすべし。
上脘、中脘、幽門、通谷、梁門、天枢、期門、章門、気海、関元。

肺の積を息奔と名づく、右の脇下に在り
尺沢、章門、足の三里。

心の積を伏梁と名づく、臍上に起こり心下に至る
神門、後谿、巨闕、足の三里。

脾の積を痞気と名づく、横に臍上二寸に在り
脾兪、胃兪、腎兪、通谷、章門、足の三里。

肝の積を肥気と名づく、左の脇下に在り
肝兪、章門、行間。

腎の積を奔豚と名づく、臍下に起こり或は上下時無し
腎兪、関元、中極、湧泉。

気塊には
脾兪、胃兪、腎兪、梁門、天枢。

膈には
心兪、膈兪、膏肓、脾兪、中脘、気海、天府、足三里。

咳嗽には
風門、肺兪、身柱。

寒痰には
肺兪、膏肓、霊台。

熱痰には
肺兪、膻中、太谿。

諸喘息には
天突、璇璣、華蓋、膻中、乳根、期門、気海。

嘔吐 氣逆には
中脘、気海、三焦兪、巨闕、尺沢、章門、大陵。

霍乱には
巨闕、中脘、建里、水分、承筋、承山、三陰交、照海、大都、湧泉。

乾霍乱には
塩湯を以て吐を探る、臍中に灸す。

喜んで大息すには
中封、商丘、公孫。

喜んで悲しむには
心兪、大陵、大敦、玉栄、膻中。

気短には
大椎、肺兪、肝兪、天突、肩井。

瘧疾には
大椎、肺兪、肝兪、天枢、三の椎、譩譆、章門、間使、後谿、承山、飛陽、崑崙、太谿、公孫、至陰、合谷。

久瘧愈ざるには
脾兪七十壮灸す。

黄疸には
公孫。

消渇には
腎兪、小腸兪。

瀉痢には
百会、脾兪、腎兪、命門、長強、承満、梁門、中脘、神闕、天枢、気海、石門、関元、三陰交。
脾泄、脾兪。
胃泄、胃兪。
大腸泄、大腸兪。

癲癇には
百会、天窓、身柱、神道、心兪、筋縮、章門、天枢、労宮、神門、三里、下巨虚、豊隆、太衝、少海、厲兌。

眼目疼痛には
合谷、外関、後谿。

耳聾には
上星、翳風、腎兪、外関。

鼻塞がって香臭を唎かざるには
顖会、上星、迎香、天柱、風門。

歯牙痛むには
承漿、頬車、合谷、列缺、太淵、魚際、合陽、三間、大迎、足三里、内庭。

喉痺には
天柱、廉泉、合谷、後谿、三間、三陰交、行間、関衝。

手痛んで挙がらざるには
曲池、肩井。

脚気には
肩井、足三里、崑崙、照海、太衝、陽陵泉。

転筋には
照海。

脱肛には
百会。

五淋には
膈肝、脾腎、気海、石門、関元、間使、三陰交、復溜、然谷、大敦。

小便利せざるには
三焦兪、小腸兪、陰交、中極、中封、太衝、至陰。

小便禁ぜざるには
気海、関元、陰陵泉、大敦。

大便秘結には
章門、陰交、気海、石門、足三里、三陰交、照海、太白、大敦、大都。

疝気には
章門、帰来、気海、関元、三陰交、大敦、隠白、太谿、太衝。

痔には
腎兪、命門、長強、承山。

類経に曰く、凡そ屍鬼に犯され暴厥して人事を省みず、若くは四肢冷へて気無しと雖も但し目中神采変せず心腹尚温かに口中涎無く舌捲かず嚢縮まざることを覚へ、及び未だ一時を出ざる者は尚之を刺して復た醒むべし。
謹んで按ずるに素問遺篇に五邪の刺法を分かつ。
 肺虚する者は赤屍鬼を見る。肺兪一半分、合谷三分。
 心虚する者は黒屍鬼を見る。心兪、陽池。
 肝虚する者は白屍鬼を見る。肝兪、丘墟。
 脾虚する者は青屍鬼を見る。脾兪、衝陽。
 腎虚する者は黄屍鬼を見る。腎兪、京骨。
以上の刺法は必ず先ず口を以て鍼を含み温腹令めて之を刺す。

婦人病

血結ぼれ月事調のはざるには
気海、中極、照海。

血崩止まざるには
膈兪、肝兪、命門、気海、中極、間使、血海、復溜、行間。

痢帯の赤白には
命門、神闕、中極。

癥瘕には
三焦兪、腎、中極、会陰。

孕むこと成らざるには
命門、腎兪、気海、中極、関元百壮、然谷。

産難横生
合谷、三陰交。

胞衣下りざるには
三陰交、崑崙。

死胎を下すには
合谷妙なり。

胎を取らんと欲せば
肩井、合谷、三陰交。

小児の病

急慢驚風
百会七壮、顖会、上星、率谷三壮、水溝、尺沢。

慢驚には
間使、合谷、太衝五壮。

臍風撮口には
承漿、然谷。

泄瀉には
胃兪、天枢。

霍乱には
外踝の尖り三壮灸す。立地(たちどころ)に効有り。

夜啼には
中衝。

疳眼には
合谷五壮灸す。

要穴終り。

禁鍼穴歌 共に三十一穴

禁鍼穴の道、先づ明らめんことを要す。
脳戸、顖会、及び神庭。絡却、玉枕、角孫の穴。顱息、承泣、承霊に随う。神道、霊台、膻中忌む。水分、神闕、並びに会陰。横骨、気衝、手の五里。箕門、承筋、及び青霊。乳中、上臂の三陽絡。二十三穴鍼すべからず。
孕婦宜しく合谷に鍼すべからず。三陰交の内も亦通論。石門、鍼灸応に須く忌むべし。女子身を終るまで姙娠無し。外に雲門、鳩尾とに有り。缺盆、客主人、深くさすこと莫かれ。肩井、深き時は人悶倒す。三里急に補て人還て平かなり。

禁灸穴歌 四十七穴

禁灸の穴四十七。承光、瘂門、風府、逆す。睛明、攅竹、下、迎香。天柱、素髎、上、臨泣。脳戸、耳門、瘈脈に通ず。禾髎、顴髎、絲竹空。頭維、下関、人迎、等し。肩貞、天牖、心兪、同じ。乳中、脊中、白環兪。鳩尾、淵腋、如(もしく)は周栄。腹哀、少商、並びに魚際。経渠、天府、及び中衝。陽池、陽関、地五会。漏谷、陰陵、條口に逢ふ。殷門、申脈、承扶、忌む。髀関、伏兔、委中に連なる。陰市、下行して犢鼻を尋ね。右の諸穴、将に艾火をもちて攻むること無かれ。

選鍼三要集跋

易に曰く、夫れ天の行くことは健かなり。君子以て自ら彊(つとめ)て息(や)まず。但だ天行を言ふときは其の一日一周にして明日一周なるを見る。重復の象の若し。至健に非れば能わずや。君子之に法て人欲を以て其の天徳の剛を害せず。則ち自ら彊て息まず。夫れ鍼は所作為(た)りと雖も伏羲初めて医道の一なり。此に明かなる者は其の道の君子なり。是を以て懈怠すること母(なか)れ。予、少年の時病有り、鍼を以て之を治す。又、中年に病有り、時に師入江先生鍼を伝ふ。三年にして自ら治す。其の後、人に刺して病を治すること数多なり。壮年に及て霊枢を聞く。其の理深ふして事広し。今刺す所の本朝の流は経絡を捨て病のみを尋ぬ。聖人の伝ふる所の道は廃れり。是を以て按ずるに学ぶ者は鍼せず、鍼する者は学ばず。世は末世にして人の気短く、如何にして是を起こさんや。僅に書を作りて不学に与ふ。譬へば管中天を見るが如しと雖も、然れども龍は一滴の水を以て世界を潤し、人は石火の微なるを以て大火と為す。是皆得る所有る故なり。此の書短しと雖も其の人を得ては則ち天下に広めんことも亦成つべし。動静其の本一気なり。一、二を生じ、二、三を生ず、十又一に帰す。是従(よ)り百千万に至りぬ。而して病は七情に発る。喜ぶときは心を傷り気散ず。怒るときは肝を傷り気逆す。憂ふるときは肺を傷り気聚る。思ふときは脾を傷り気結ぼふる。悲しむときは心包絡を傷り気凝る。驚くときは胆を傷り気乱る。恐るるときは腎を傷り気怯る。是は皆内より生ずる病なり。又、五傷有り。久しく行くときは筋を傷り、久しく立つときは骨を傷り、久しく坐すときは肉を傷り、久しく臥すときは気を傷り、久しく視るときは血を傷る。是皆為す所の害なり。風寒暑湿燥熱は外従り来る病なり。気血痰の三、是本として百病を発す。其の本を治するときは末治せずということ無し。是を能く弁へて要穴を考へ鍼を刺すべし。且、又心肝要なり。手に刺して心に刺さざる者有り。小人間居して不善を作すこと至らざる所無し。又曰く霜を屬(ふ)んで堅き氷至ると。善も亦然り。故に積善の家には必ず餘慶有り。積不善の家には必ず餘殃有り。是を以の故に其の心慎んで鍼を刺すべし。且、此の書は不学の者に教へ、且、盲人に諳んぜ使めんが為なり。

選鍼三要集跋畢


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