『医学節要集』杉山和一著⑦ ~江戸時代の鍼灸の教科書~

五臓に五臭、五声、五色、五味、五液を主る事

夫れ五臭とは五つのにほひなり。譬へば心の臓は萬の香を主る。何んとなれば心の臓の性は火なり。萬の物火に入れて焼く則は必ず臭ひ出るなり。故に心の臓は萬の臭ひを主る。肺の臓は萬の声を主る。何んとなれば肺の臓の性は金なり。金は音の高きものなり。故に肺の臓は萬の音を主る。肝の臓は萬の色を主る。何んとなれば肝の臓の性は木なり。木は春を主るが故に萬の物より草木は色深し。故に肝の臓は萬の色を主る。脾の臓は萬の味を主る。何んとなれば脾の臓の性は土なり。夫れ五味は五穀より出る味なり。五穀も亦土より生ず。故に脾の臓は萬の味を主る。腎の臓は萬の液を主る。何んとなれば夫れ腎は水を主るが故なり。斯くの如く心は臭を主り肺は声を主り肝は色を主り脾は味を主り腎は液を主ると雖も又一臓の中にも五臭五声五色五味五液有り。假へば肝の臓の病は色青し。香臭き匂いは肝なり。人を喚ぶ声も肝なり。声を出さずして泣く泪も肝なり。味酸きも肝なり。心の臓の性は色赤し、焦がれ臭きは心なり。笑う声も心なり。汗の出るも心なり。味苦きも心なり。脾の臓の性は香馥(かふ)ばし。色黄なるは脾なり。甘き味も脾なり。歌唄ふも脾なり。涎も脾なり。肺の臓の性は色白し。味辛きは肺なり。憂ふる声も肺なり。涕の出るも肺なり。生臭きも肺なり。腎の臓の性は色黒し。味鹹は腎なり。うなる音も腎なり。腐れ臭きも腎なり。尿も腎なり。此の如く一臓の中にも五つの主り五臓併せて五五、二十五。故に一臓の中に万病有りと雖も止まる所は五行なり。

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